№2.相続財産の調査と確定(預金・株式)をスムーズに進める方法

query_builder 2025/01/03
相続手続き(基本・相続後すぐ)
№2.相続財産の調査と確定(預金・株式)をスムーズに進める方法

「相続財産の調査と確定」は、財産の全体像を把握し、適切な遺産分割や相続トラブルの回避を目的とした重要なステップです。しかし、相続財産の調査は複雑で、多岐にわたる財産を正確に把握することは困難です。


そこで今回は、相続財産のうち、預金と株式に焦点をあて、「相続財産調査の概要」や「調査の手順・注意点」「いつまでにやるべきか」などについて詳しく解説します。

適切な相続財産の調査を行うことで、スムーズな相続手続きと公正な分配を実現できます。

<相続財産の調査と確定(預金・株式)>における手続きのポイント

いつまで

概ね2か月程度で

どこで

銀行・信用金庫・信用組合・農協、信託会社、証券会社

1.「相続財産の調査」の概要

始めに「相続財産の調査」の概要として、「相続財産を調査する目的」や「調査対象となる主な財産の種類」、「隠れた財産を見逃さないための方法」などを確認します。


(1)相続財産を調査する目的とは?

相続財産を調査する目的を分かりやすく言うと、「何がどれだけあるのか財産の全体像を把握する」ことです。

たとえば、大きな引き出しに家族全員の貴重品が入っていると想像してください。これを適切に整理し、分け合わないといけない場合、まずは中身を全て確認するところからスタートします。

相続財産の調査も同じで、まずは、相続財産の中身を全て把握することから始めます。実際に相続財産を調査することで、次のようなメリットがあります。

 

✓財産の全体像を正確に把握できる
どの銀行にどれだけ預金があり、不動産や株式など相続の対象となる財産がどれくらいあるのか全体像が明確になります。


✓相続トラブルを未然に防ぐ
財産が不明確なままだと、相続人同士の話し合いがスムーズに進まないだけでなく、不公平な分配につながることがありますが、そのようなトラブルを防ぐことができます。

 

<調査が不十分だった場合のトラブル>

たとえば、相続人が調査を怠り、隠れた財産(未申告の預金)があった場合、後から発覚すると、再度、財産の分割をやり直す必要が生じます。また相続税申告後に発覚すると、修正申告を行う必要まで生じ、結果的に加算税や延滞税などのペナルティを受けることもあります。

こうした手間を防ぐためにも、最初にしっかりと調査を行うことが重要です。また、相続の専門家に関与してもらうことでトラブルの防止につながります。

(2)調査対象となる主な財産の種類

相続財産の調査対象となる主な財産は次の5つです。

 

①預貯金:
銀行や信用金庫などに預けている普通預金、定期預金、外貨預金などが該当します。

②株式:
証券口座で保有する上場株式や会社を経営していた場合には未上場株式などが該当します。
③不動産:
自宅の土地や建物、賃貸している収益物件などが該当します。

④生命保険

被相続人が保険契約者・保険料負担者・保険金受取人で、相続人が被保険者の生命保険に関する権利

※被相続人が被保険者の生命保険は相続税法上のみなし相続財産に該当しますが、遺産分割の対象となる本来の相続財産には該当しません。

⑤借金

住宅ローン(団信加入であれば返済不要)やマイカーローン、事業資金の借入などが該当します。


(3)隠れた財産を見逃さないための方法

調査では、表に出ていない次のような「隠れた財産」を見つけることが重要です。

 

✓銀行口座や証券口座
例えば、故人が日常的に使用していた口座以外にも、過去に作成したが利用頻度の低い口座が存在することがあります。

✓現金や貴金属
自宅の金庫やタンス預金など、意外な場所に高額の現金が保管されているケースもあります。

(4)調査を怠った場合に起こるリスク

相続財産の調査を怠ると、以下のようなリスクが発生します。

 

✓財産漏れによる相続分配トラブル
遺産が後から見つかった場合、分配をやり直す必要があります。これが原因で親族間の争いに発展することも。

✓未納税金の発生リスク
把握していなかった財産に税金がかかる場合、期限を過ぎると延滞税が発生する恐れがあります。

(5)財産一覧を相続税法上の評価額で先に作成

遺産分割の際に用いる評価額には時価を採用することが一般的ですが、財産調査の際は、相続税法に基づく評価額で財産一覧を先に作成することがお勧めです。


相続税法に基づく評価額で財産一覧を作成することで、相続税の申告が必要となるのか早めに判断することができ、また、弁護士や税理士との相談の際にも効率的に手続きを進めることが可能となります。

(6)財産調査は「預貯金」⇒「借金」⇒「不動産」⇒「その他の財産」の順で進める

財産調査は、「預貯金」⇒「借金」⇒「不動産」⇒「その他の財産」の順で進めることをお勧めします。

始めに預貯金について調べた方がいいのは、預貯金の取引履歴から、他の財産情報も発見できて効率よく進められるためです。

次に借金について調べた方がいいのは、相続放棄の期限は3ヶ月のため、早めに借金の有無を確認することで、相続放棄の判断を早期に行うことができるためです。

その次に不動産について調べた方がいいのは、不動産には、「評価額を算定」というプロセスがあり、そこに時間がかかるためです。


2.預金の調査の手順と注意点

相続における預金の調査は、例えるなら家中に隠された宝箱を探し出す作業のようなものです。遺品整理を進める中で、預金の全体像を把握することは公平な相続の第一歩です。

 

預金口座を特定するには、以下の3つの手順を踏むことが重要です。

 

ステップ1:遺品整理で証拠を見つける

✓通帳やキャッシュカードの確認
遺品の中にある通帳やキャッシュカードは、最も簡単に口座を特定できる証拠です。日頃使っていない口座も含まれていることがあるため注意しましょう。


✓郵便物の確認
銀行からの通知や取引明細が郵便物として残されている場合があります。これを手がかりに取引銀行をリストアップします。

 

ステップ2:金融機関に問い合わせる

✓問い合わせに必要な書類を準備
戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などを用意します。これにより、金融機関は法的に相続人からの問い合わせを受け付けます。


✓各銀行の窓口や問い合わせ先を利用
銀行の窓口や電話対応窓口に問い合わせ、口座残高や取引履歴を確認します。

 

ステップ3:隠し口座や未使用口座を探す

✓公共料金や税金の支払い履歴を確認
電気・ガス・水道などの引き落とし先を追跡することで、見逃されがちな口座を発見できます。


各銀行の統合システムを活用する
最近では、銀行間の統合データベースが整備されているため、全ての口座を一括で確認できる場合もあります。


✓情報を相続人全員で共有する
相続人全員が情報を共有することで、見落としや重複を防ぎます。


3.株式の調査の手順と注意点

相続における株式の調査は、株式が証券取引所の株式市場で取引されている「上場株式」か、「非上場株式」かによって対応が異なります。

非上場株式は、親族が中小企業を経営している場合などに保有していることがあります。

(1)上場株式の調査の手順と注意点

上場株式を特定するには、以下の2つの手順を踏むことが重要です。

 

ステップ1:証券会社からの郵送物や取引履歴の確認

✓郵便物の確認:

遺品の中に証券会社からの通知(例:取引明細書や配当金のお知らせ)があれば、それらを手がかりにして、これらの書類から証券会社や株主名簿の管理会社を割り出すことができます。

 

ステップ2:証券会社に問い合わせる

✓問い合わせに必要な書類を準備
戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などを用意します。これにより、証券会社は相続人からの問い合わせを受け付けます。


✓証券会社の問い合わせ先や証券保管振替機構を利用
証券会社の電話対応窓口に問い合わせ、口座残高や取引履歴を確認します。証券会社が不明な場合は、「証券保管振替機構」に問い合わせ、どの証券会社と取引があるか確認できます。


(2)非上場株式の調査の手順と注意点

非上場株式は上場株式と異なり、株主情報は公開されていません。そのため、非上場株式の株主かどうかを親族が生前から把握している場合には問題となりませんが、把握していない場合には、そのことを調べる方法は非常に限られています。

 

非上場株式を特定するには、以下の2つの手順を踏むことが重要です。

 

ステップ1:株券の確認や仕事関係者への聞き取り

✓株券の確認:

近年では会社が株券を発行することは稀ですが、仮に遺品の中に株券があれば、会社を割り出すことができます。また、株券不発行会社であっても、過去に株券を発行していた場合において、当時の株券があればそれを手がかりに会社に保有株式を確認することになります。


✓仕事関係者への聞き取り:

被相続人が過去に設立した会社や設立にかかわった会社があるかどうかを仕事の関係者から聴き取りをします。

 

ステップ2:会社に問い合わせる

✓問い合わせに必要な書類を準備

株券(株券発行会社の場合)、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などを用意します。


✓会社に問い合わせ
会社に問い合わせ、保有する株数と払込金額、取引残高の有無を確認します。これにより、会社間と借入や貸付がある場合には、それらの残高も確認することができます。

4.相続財産の調査と確定はいつまでに?

相続財産の調査と確定の時期(タイミング)は「できるだけ早く」が原則です。

相続後3ヵ月以内に相続財産の「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」のいずれかを判断する必要があるため、相続後にすぐやらなければならない死亡届出などの手続きが済んで落ち着いたら、速やかに着手し、相続後2カ月程度で終わらせることがお勧めです。

 

相続財産の調査と確定には、ある程度の時間と手間がかかるため、時間に余裕をもって進めることが重要です

5.相続の基本の手続き

相続の基本の手続きには、「相続財産の調査と確定(預金・株式)」の他にも、「相続財産の調査と確定(不動産)」や「相続財産の調査と確定(その他の財産)」等があります。

 

届出・手続きの内容

期限

届出・手続きの窓口など

相続人の調査と確定

概ね1か月程度で

市区町村役場

相続財産の調査と確定(預金・株式)

概ね2か月程度で

銀行・信用金庫・信用組合・農協、信託会社、証券会社

相続財産の調査と確定(不動産)

概ね2か月程度で

法務局、市区町村、地主・家主、不動産管理会社

相続財産の調査と確定(その他の財産)

概ね2か月程度で

生命保険会社、ゴルフ場、勤務先・会社、債権者など

遺言書の有無の確認

概ね1か月程度で

自宅や公証役場

遺言書の検認と開封

戸籍等の準備ができ次第

家庭裁判所

相続方法の決定(相続放棄・限定承認の申立て)

3カ月以内

家庭裁判所

遺産分割協議の実施

相続人と相続財産が確定でき次第

法定相続人間で

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議が終わり次第

法務局

遺産分割の調停と審判

遺産分割が整わない場合は速やかに

家庭裁判所

 

相続の基本の手続きについての詳細は、以下のLink先をご参照ください。

 

「相続財産の調査と確定(不動産)」に関する記事はこちら:

・・・・・

 

「相続財産の調査と確定(その他の財産)」に関する記事はこちら:

・・・・・

 

「相続人の調査と確定」に関する記事はこちら:

・・・・・

6.まとめ

今回の記事では、相続財産のうち、預金と株式に焦点をあて、「相続財産調査の概要」や「調査の手順・注意点」「いつまでにやるべきか」などについて詳しく解説させていただきました。

 

相続財産の調査と確定は、相続後落ち着いたら、速やかに着手し、相続後2カ月程度で終わらせることがお勧めです。

 

相続財産の調査は、財産の全体像を把握し、適切な分配と相続トラブルの回避を目的に行います。

調査対象は、預貯金、株式、不動産、生命保険、借金など多岐にわたり、隠れた財産を見逃さないことが重要です。調査が不十分だと、後から見つかった財産により分配のやり直しや相続税の修正申告のリスクがあります。

 

預金調査では、通帳や郵便物の確認、金融機関への問い合わせ、公共料金の引き落とし先の確認などを通じて口座を特定します。

一方で、株式調査では、上場株式は証券会社からの郵便物や取引履歴を確認し、非上場株式は株券確認や仕事関係者への聞き取りを行います。

 

相続財産の調査におけるポイントは次の3つです。

✓情報を相続人間で共有することで調査の漏れを防ぐことが重要です。

✓財産一覧は相続税法上の評価額でまずは作成することがお勧めです。

✓相続の専門家に相談することで、トラブルの防止につながります。

 

 

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